戦死した兄の夢とカラスの群れる川
どんな伝承か
昭和五十七年八月十四日の夜、飯田市に住む四十七歳の男性が、原因不明の重病を患う中で夢を見た。戦争で死んだ兄が、若くして亡くなったもう一人の兄とともに現れ「こんな家に帰っても居場所がない」と言い残して遠ざかっていった。兄は出征前、村に来た娘に恋をしたが「よそ者」だと両親に反対され、志願兵として送られトラック島で戦死していた。娘は今も独身で看護婦をしているという。八月二十三日に病状が悪化した男性は「きれいな川を見た。カラスがいっぱいいた」と話し、間もなく息を引き取った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。