大雄寺の山門をくぐる死者の足音
どんな伝承か
昭和四十七年の秋の夜、飯田市浜井場小学校に勤める教師が、同学年の仲間三人と町はずれの大雄寺を訪ねた。住職の子息が教え子だった縁で、道元禅師についての話を聞かせてもらう約束だった。当時、京都花園大学の助教授として印度哲学を講じていた住職の良昱は俳人でもあり、話題も豊富だった。酒食のもてなしを受けるうち、「人が死ぬと魂が知らせに来るというのは本当か」と尋ねると、良昱は「来るんですよ。足音が山門をくぐってこの本堂の前まで来て、ぴたっと止まるんです」と答えた。妻も何度も同じ足音を聞いたといい、次の朝には必ず葬式の知らせが来ると語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。