手術中に霧の先へ見えた川
どんな伝承か
昭和五十一年、高校二年の春休みに手術を受けたときのこと。麻酔が体に合わなかったらしく、急に心臓が速く打ちはじめた。本人は手術を前に緊張しているのだと思っていたが、次第に頭がぼんやりし、看護婦や医師が遠くで騒いでいるように聞こえた。気づくと目の前に濃い霧が立ちこめ、目を凝らすと百メートルか二百メートルほど先の低い所に、川らしいものが時折きらめいて見える。その向こう岸か川のあたりに、上半身だけの人影があった。霧は白い部分と薄い桃色の部分があったという。内科医が駆けつけてくれなければ助からなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。