野根山の狼と鍛冶屋の婆
どんな伝承か
土佐の東北端、佐喜の浜という小さな漁村の近くに、大木が茂る険しい野根山がある。ある夜、藩の飛脚がこの山道で産気づいた女を助け、杉の大木に桟敷を作って介抱していると、無数の狼の群れに襲われた。飛脚が刀で斬り防いでいると、狼の一匹が「佐喜の浜の鍛冶屋のばあさんを呼んで来ずばなるまい」と言い、狼たちは退却したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。