松虫姫の病を治した萩原の薬師
どんな伝承か
松虫寺の縁起。天平のころ、聖武天皇の皇女・松虫姫は病に伏す日が多くなった。ある日、下総の萩原の薬師如来が夢枕に立ち、東国へ下って祈れば難病も治ると告げた。帝は姫を牛の背に乗せ、行基を供につけて下総へ送った。萩原に着いた姫は薬師を拝み、身を清めて食を断って祈り、三十七日目の満願の日に疲れ果てて眠りに落ちると、夢の中で薬師から病の平癒を告げられた。姫は恩返しに里人へ読み書きや養蚕、機織りや針仕事を教えた。帝は喜んで行基に七仏薬師を刻ませ、都の工匠を遣わして寺を建てさせた。寺は姫の名にちなんで松虫寺と呼ばれ、地名も松虫となった。帰京した姫は遺言で分骨され、堂のそばの松虫の廟に葬られたという。
原典より
印旛郡印旛村松虫にある松虫寺。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。