太田山の田んぼに並ぶ狐の提灯
どんな伝承か
大正時代のこと、県立上総博物館のある木更津市太田山のふもとの田んぼでは、土曜の夜になるときまって提灯が一つずつともり始めた。灯はしだいに数を増し、木更津駅の方へ向かって行列をつくったが、駅に近づくと次々に消え、しばらくするとまた元の場所に灯が見えて行列が始まったという。土地の人はこれを狐火と呼んだ。富津市川名の小森恵久さんも、女学生のころ寄宿舎で暮らしていてこの火を見たという。大勢の人が見ていることから、筆者は火の玉や人魂と同じ共同幻覚だろうとしつつ、今の木更津からは思いも寄らない話だと記している。
原典より
大正時代のことだが、県立上総博物館のある木更津市太田山の下の田圃に、土曜日の夜になるといつも、ひとつずつ提灯がつきはじめ、だんだん数を増して、木更津駅の方へ行列がはじまり、駅に近づくと次々に消えてしまい、しばらくすると、…—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。