化粧に暮れた山田のお国さん
どんな伝承か
山田のお國さんは、昔、山田村の近くのある茶屋の娘であったが、生来のしゃれ者で化粧に身をやつすことが一通りでなかった。しかも化粧中はどんな用事があっても決して動こうとせず、同じ家の内にいながら親の死に目にも逢えなかったというので近傍の評判はよろしくなく、とうとうどこからも嫁の貰い手がなかった。そこでそのあたりでは、身じたくに手間を長く費すのを「山田のお國さんのようだ」と言って嘲笑する。長柄・本納あたりには山田のお國さんという女児の遊戯まで出来ており、一人がお國さんとなり、他が迎えに来て化粧中の様子を問答して賑やかに踊り、最後にお國さんは輿の途中で馬に蹴られるという。
原典より
山田のお國さんは、昔(一説には天正年間、今の、土睦村北山田區。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。