蓮蔵院観音の鍵と住僧の転落
どんな伝承か
引田村の真言宗蓮蔵院にある観音宮殿の鍵は、代々立野家の蔵に伝わり、開帳のときはこの家の当主が鍵を開くのが恒例である。ところがある年の開帳で住僧が、自分は観音の弟子であり俗人の手に鍵を委ねる必要はないと言って立野家から鍵を取り上げ、自ら開こうとしたところ、たちまち目がくらんで階段から真っ逆さまに落ちてしまったと房総志料続篇は記す。この観音は正観世音で、略縁起によれば聖武天皇の御代に行基が天下の乱れを憂えて造ったといい、御首が七つに曲がっていることから七曲観音と呼ばれ、霊験は日々新たであるという。
原典より
引田村蓮蔵院(真言宗)の観音宮殿の鍵は、代々立野家(記者立野某三氏家)立野家(「房総一覽志」)の蔵にある。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。