土井左衛門と船難を招く大蛇の霊
どんな伝承か
富津、古津の洲袋は一里ばかり海中に突き出し、三崎の走りと相向かって、大蛇のような形をしている。昔、里の土井左衛門は蛇食というところで大蛇を射止め、その矢をこの地の八幡宮へ奉納しようと、古津の淵から船に乗ろうとした。その際、大蛇が現れて船を背負い、通そうとしない。左衛門は怒って、おのれは大蛇の霊であろうと言うが早いか、剣をもって射止めてしまった。この事があってから、この氏族の者が古津から出帆する船に乗り、あるいは船に土井の矢を乗せて海を渡る時には、船難に遭うと言い伝えられている。
原典より
富津(古津)の洲袋は、一里ばかり海中に突出してゐて、三崎の走だと相向し、大蛇のやうな形をしてゐる。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。