水に宝珠の字が現れた宝珠院
どんな伝承か
国府村府中の字宝珠院に、里見氏の祈願所として三百石を有した真言宗の大寺、金剛山宝珠院がある。永徳のころ、開山有純の父が地蔵尊を深く信仰して資財百石を納め、自宅を堂坊として宝樹院と名づけ、有純を開山に迎えて一子を僧都の弟子とした。その子は西国で修行して帰り、水を汲んで仏前に供えようとしたところ、不思議にも水の中に「宝珠」の二字が現れたので、寺の名を宝珠院と改めたという。本尊の地蔵尊は有純が自ら刻んだものだと伝わる。「房総志料」には府中の村人が珊瑚樹を垣や墓の目印に植え、不老樹とも呼ぶと記されており、そうした樹が宝珠院のそばにあることや里見氏との縁がその一因だろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。