海老敷に伝わる六代禅師の塚
どんな伝承か
安房郡國府村大字海老敷にある古蹟を、里俗に六代禅師の塚といい、その草陰にある古墓を六代禅師の墓であるといって、村の童子は幼いうちから石の上に香花を供えるという。六代禅師とは六代御前のことで、小松三位中将平維盛の若君であった。平家滅亡の際、乳母や姫君とともに隠れていたのを北条四郎時政に捜し出され、十二歳で捕えられたが、文覚上人の願いによって命を助けられ、後に高野山へ上って修行した。しかし文覚が死罪に処せられた折に連座し、召し捕られて鎌倉へ下される途中、相模国鎌倉郡田谷の里で斬られたと「平家物語」は伝える。「房総志料」は、その首を海老敷の古蹟の地に葬ったのであろうと述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。