大場ヶ瀬に生まれた猿猴の子
どんな伝承か
大正末期の話。予土の境にある吉野部落の大場ヶ瀬で、若い女が相手も分からぬまま身ごもり、噂に上っていたが、十月十日たってとうとう子が生まれた。なかなかの難産で、川崎の産婦人科の渡辺医師のところへ連れて行ったところ、どうやら無事に生まれたが、どう見ても人間の子とは思えないものであった。赤子は生まれて間もなく死に、たっての頼みでその子は医師に与えられ、アルコール詰めにして大事に保存された。頭の上に皿があり、口は尖り、体中に毛が生えていて、猿猴の子に違いないと噂されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。