ケンモンのあだ名を叫んだ三次
どんな伝承か
大正の初めごろの奄美大島の話。三次という、物を恐れない青年がいた。徴兵検査の前だったというから十九歳くらいだったろう。ある日、友人と夜中まで酒を飲んだ帰りに、ガジマルの木が茂り、ケンモンが住むといって恐れられている寂しい場所で、口にしてはならないケンモンのあだ名を大声で呼び、ネブザワ、相撲をとろうと叫んだ。すると子どもほどの黒い影が数十も集まってきて、次々に組みついてきた。さすがの三次もついに力尽き、気を失ってしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。