欅の根を川へ引き込んだ水くも
どんな伝承か
宮城県牡鹿郡女川町の話である。明治になってからのこと、留じんつぁんという五、六十の男が仲間三人で炭焼きをしていた。空の真っ黒な日に二人が石巻と渡波へ用足しに出たので、留さんは一人で釣りに出た。自分の釣場の欅の根に体をもたせて釣っていると、餌ばかり取られ、くもが足の親指と次の指に糸を巻きつける。うるさいので糸を欅の枝に掛け替えると、やがて根がめりめりと鳴り、掛けた糸がぴんと張って、大きな根がずぶずぶと川へ引き込まれ、水底に沈んでしまった。留さんは夢中で家まで走り、布団をかぶって三日寝込んだ。あれは河童だと言う人もあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。