勝興寺の寺守の小屋を吊り上げた小天狗
どんな伝承か
富山県の古国府にある勝興寺は本願寺派の大寺で、壮麗な堂宇を老杉の巨木が囲む霊場であり、昔から天狗が住むと伝えられてきた。夜更けに寺へ戻る者があると、砂や小石をばらばらと浴びせたり、枝を折って投げるような音を立てたりしたという。筆者が学生のころ泊まった折、寺には六十四、五歳の下男の老人がいて、昼は境内を掃き、疲れると本堂裏の小屋で眠り、どんな嵐の夜でも刻限どおりに拍子木を打って夜回りをしていた。この実直な寺守には天狗も手を出せまいと思われていたが、いたずら好きの小天狗もいたようで、ときどき小屋を宙に吊り上げ、老人が仰天するのを見て笑い騒ぐ声がしたという。
原典より
二十年ばかり前、只今七十五、六になる老人(現存)より聞いたは、カシャンボ(河童)は夏は川に住み、冬は森にあって人を魅す。—— 現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。