さんまいへ踊りに誘われた猫
どんな伝承か
語り手の町に「シンザブローのおばば」と呼ばれる髪結いの老女がいた。ある秋の月のよい晩、おばばがこたつに頭をくっつけて半分眠っていると、家の裏で「オーイ、シンザブロー、さんまいへ踊りにいかんかー」と声がした気がした。うす目を開けてみると、横で丸くなって寝ていた猫がむっくり起き上がり、じっと顔をうかがっている。充分に眠っていないと見たのか、猫はスーッと伸び上がって裏へ向かい、「あとからいくー」と言った。おばばは恐ろしくなって眠ったふりをしていた。猫はそっと立って便所の手洗いに掛けてある手ぬぐいを口にくわえ、破れ戸のすき間から出て行った。朝に起きてみると、手ぬぐいは元のところに掛けてあったが、しっとりと濡れていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。