支笏湖に現れた飼い猫クロ
どんな伝承か
昭和六十年六月頃、やっと春らしくなった頃のこと。語り手は主人の父と一家で、恵庭から千歳、支笏湖、大滝村を通って北湯沢温泉へ向かった。途中、支笏湖で休憩しようと車を止め、ボート乗り場へ降りて行った。人気の少ない夕方、娘たちと砂場で遊んでいると「あっ」と呼ぶ声がする。振り返ると、我が家で飼っている黒猫のクロではないか。呼ぶととてもなついて来て、一行七人で撫でたり抱いたりし、連れて帰ろうと言う子までいた。こんな遠い所にいるはずもないのにと不思議に思ったが、翌日家へ帰ると、二百メートルほど離れた道路に黒猫が倒れていると知らされ、父が連れて来た。それきりクロは帰らず、死んだのだと思ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。