月にさらわれた蘭越の怠け娘
どんな伝承か
千歳の蘭越に伝わる話である。怠け者の娘が母に水を汲んでこいと言いつけられて腹を立て、小刀で炉縁に傷をつけ、お前は炉縁だから一日中背をあぶって遊んでいられて羨ましいとぼやいた。柱にも手桶をぶつけて悪態をつき、そのまま川へ行ったきり戻らない。母が探しに行くと、川原の砂に履物だけが残っていた。上流でたずねると、赤腹ウグイもイトウもマスも、日ごろ粗末に扱われた恨みから教えないと言う。やがて上ってきたサケだけが、神魚と呼んで骨まで大事にしてくれる礼にと教えた。娘は月を羨んだために月へさらわれ、月の中に手桶を持つ姿が見えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。