山の田んぼに聞こえる子の泣き声
どんな伝承か
昭和二十年前後、終戦当時で最も食糧の乏しかった頃、和歌山県東牟婁郡那智浦町(現・那智勝浦町)の宇久井海沿いに住む若夫婦は、小さな子を家に残して山中の高津気にある田んぼへ仕事に出た。昼ごろ「そろそろ腹が減ったころだろう」と話していると、決まって山から子供の泣き声が聞こえてきたという。これは狸の仕業だと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。