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熊野灘に現れた船体のない航海灯

所在地和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字勝浦
年代明治〜昭和
登場浜崎文太郎、目撃した船長
出典日本怪談実話

どんな伝承か

高知県浦戸村出身の浜崎文太郎が村井汽船の船長だったころ、三千五百トンほどの貨物船に石炭を積み、若松から東京へ向かっていた。熊野灘にかかった夕方六時ごろ、甲板で水夫たちが万歳とはやし立てる声がした。上がってみると、勝浦沖の方から青と赤の航海灯が速い速さで近づいてくるのに、船体は見えない。水夫らがからかうと灯は消え、すぐまた向こうから現れた。蜃気楼ではないかと言う浜崎に、水夫長は、あいつが身を投げたのはちょうど去年の今日だと告げた。妻に男ができて沈み込んでいた船員が、昨年そこから投身していたのだった。浜崎が長い船乗り暮らしで怪異を見たのは二度だけだったという。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))

『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。

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