雨の晩に自転車で追い越した狸
どんな伝承か
語り手は狸に化かされたことがあるという。家の近くの、今は道路が下を通っているが昔は上から続いていた道を、雨の晩の八時ごろ帰ってきたとき、後ろから自転車に乗ってくる者がいた。この暗がりに自転車とはと思いつつ、ぶつけられてはかなわないと道の端へよけると、その者は脇をすっと通り過ぎて下っていった。ところが気がつくと、端へよけたつもりが実際はずっと先まで来ていた。そのとき少し向こうの道へぽとんと飛び込んだものがあり、それが自分を化かした狸だったのだろうと語る。三十年ほど前のことだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。