梅の辻でそばをせがんだ娘
どんな伝承か
寒い夜、梅の辻のあたりに夜なきそばの屋台を出していた男が、遅くなって客もなく、寒いので帰ろうとしていると、きれいな娘がひょっこり入ってきた。娘はうまそうにそばを平らげると、丼を差し出して「あと、あと」とおかわりをせがむ。話しかけても何も言わず、黙って食べるばかりで、男は自分のそばがよほどうまいのだと内心にんまりした。娘は三杯も食べて代金を払い帰っていった。ところが翌日、前の晩の売上を数えると、銭の代わりに柴の葉がどっさり出てきて、あの娘は狸だったかということになった。「もう一杯」でなく「あと、あと」と言ったのがおかしいと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。