日清・日露戦争に出征した観音院の狸
どんな伝承か
徳島県板野郡の観音院に住みついていた狸は、明治二十七、八年の日清戦争のとき、住職の許しを受けて戦地へ出ていき、講和を待たずにけがをして帰ってきた。明治三十七、八年の日露戦争の際にも、お国のためには行かねばなるまいと言って再び出征し、各地で大いに手柄を立てて戻ったという。その頃は毎晩のように自分の戦いぶりを住職に語って聞かせたそうで、この住職が戦地に行った者でなければ知らない事情に詳しかったため、狸の戦話もうそではあるまいと言われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。