汽車の火の粉が招いた石母田の大火
どんな伝承か
蒸気機関車の時代のこと。機関士が汽車の釜を掃除した綿で油をふき、その綿を釜の中へくべた。それが蒸気とともに上り、煙と一緒に煙突から飛んだ。その火が飛んで火元となり、ずっと燃え広がった。明治三六年、石母田の大火である。話者が生まれる前の出来事で、聞いた話だという。大火といっても五、六軒ほどだったが、歩けないほど風が強かったという。二度と同じことを繰り返されては困るというので鉄道省へ陳情し、鉄道沿線の家々はみなトタンをもらって屋根にかけた。それまでは主に茅葺きだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。