電灯は音を立ててつくかの言い争い
どんな伝承か
語り手の村に電灯がついたのは大正一一年の夏だった。電気工事が終わってもなかなか灯はつかず、一キロ離れた町には一か月ほど早くついた。祖父は、電気がつくときはぽっと音がしてつくと言い、母は、音などしない、ぱっと明るくなるだけだと言う。祖父は昔九州の直方で電灯を見たが音がしていたと言い、母は明治四〇年頃に広島で奉公していたが音はしなかったと言って譲らない。語り手は確かめようと夕方に何度も町へ行ったが、じっと見ているとなかなかつかず、友達と遊んでいるといつのまにかついていた。結局確かめられぬうちに、自分の家にもぱっとついたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。