ラジオのせいにされた杉枯れ
どんな伝承か
大正十四年にラジオ放送が始まり、新聞に鉱石ラジオの組み立て講座が載ると、安楽寺の住職はさっそく作った。レシーバーで一人ずつ聞く仕組みで、五、六人が周りに集まり、針金と鉱石がずれないよう息を殺して聞いた。住職は天気予報を聞いては手作りの赤・白・青の旗を寺の高い木に掲げ、村人に知らせていた。聞き始めて二年目、寺の南東の村長屋敷の杉が四、五本先から枯れた。村長夫人が来て、寺のラジオの電気が山の上を通ったせいだからやめてくれと言ったという。村長の家にラジオは無かった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。