夜ごと田を荒らした真観寺の白馬
どんな伝承か
寛文五年の二月、戦乱で焼けた小見の真観寺が再興されたころ、観音堂に白馬の絵馬が納められた。桐板を馬の形に切り抜いた一四〇センチほどのもので、いまにも駆け出しそうだと人々は喜んだ。ところが麦刈りの季節になると田の麦が踏み荒らされ、足跡は人のものではないという噂が立つ。秋には稲が同じように荒らされ、白い馬が真観寺の山門へ入るのを見た者まで出た。寺に馬はいない。住職は檀徒総代と相談し、絵馬の前足の板を切り落とした。以後、野荒しの噂は絶えたという。足を切られたままの絵馬は今も寺に残る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。