線が切れていると言った工場長
どんな伝承か
会社の宴会での一幕である。日ごろ真面目で実直に見えるY工場長が指名され、頭をかきながら前へ出てきた。手渡されたのはワイヤレスマイクだったが、工場長はそれをしげしげと眺め、線が切れているからこれでは歌えないぞ、とつぶやいた。その声がマイクを通してそのまま座敷じゅうに響き渡り、一同は大笑いになったという。石川県小松市の話として、勤めていた兄から聞いたと矢野信保が報告している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。