売られる前夜に一晩中泣いた楠
どんな伝承か
長崎県北高来郡高来町での話。近所に立派な石垣を巡らせた屋敷があり、そこに何百年も経った楠の大木があった。主人がこの木を福岡県大川の家具製造工場へ売るため商談に行くことになったが、その前の晩、一晩中その楠が泣いていたという。折しも泊まっていたお遍路さんが、商談のことを知らないまま「一晩中楠が泣いていた」と主人に告げた。主人はそれを知りながら大川へ行って楠を売り、帰る時には自分の片足を一本切り落として帰宅したという。昭和九年、この家は火事になり全焼した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。