畑の樟をめぐる祟りと天然記念物指定
どんな伝承か
畑には樹齢四五○年、島根県一の大きさで天然記念物に指定された樟がある。五○軒ばかりの畑村の鎮守だった大元神社の神木で、村を開いたときすでに立ち、根元に御幣を立てて祀られてきた。明治に神社は三渡八幡宮へ合併され、社も他の木も失われたが樟だけは残った。日陰が耕作の邪魔になるとして枝を伐ると村に伝染病が流行し、伐った家では主人と女房、一人息子、母親の四人が死んだ。峠向こうの兼五郎は樟脳が取れると聞いて鉈を打ち込んだが、その後石灰石が落ちかかって死んだ。昭和一三年、青年たちの新生会が保存に乗り出し、樟脳が軍需物資となる中で天然記念物の仮指定を得て樟は守られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。