裏鬼門の南天が断った狸つき
どんな伝承か
約二〇〇年ほど前、藤田家に大変な美人の娘がいて豪農に嫁いだが、狸つきになって帰ってきた。法印が祈祷をしたが治らず死んでしまった。屋敷が悪いというので裏鬼門に南天を植え、南天は難を転ずる、一年に一本ずつ増えるので百本以上になれば家が栄え悪いものは取りつかぬようになると言って、法印は伝来の銘刀を礼に取って帰ったという。その後、南天の株は増えて約二〇〇本になり、祖父も父も何事もなかった。昭和二一年頃、狸つきの女が、わしは上槙にいたが藤田の儲三について来た、あいつの家には行けなかったのでお宮の木に住みついたと言ったという。株は大きいが実が少なく、植えても芽を出さない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。