一夜で稲が松に化した住吉の苗松
どんな伝承か
語り手の若い頃、まだ田植は手植だった。人より早く田植をすませようと、宵の内に明日植える苗を田んぼに打っていると、父が怒っていった。「そんなことしたら住吉さんの苗松みたいに松になってしまう、やめとけ」。苗松というのは、昔、一夜にして稲が松に化し、その松の中に神殿を造ったというものである。こうした言い伝えから、この地方では田植時に宵の内から田んぼに苗打ちをやらない風習があった。四〇数年前にこの松が枯れ、当時住吉神社の氏子総代だった父は、その古木で机や花台を知人の表具師に作ってもらった。裏には作者名と「住吉社伝唱夜苗松」と深く刻まれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)