証拠に皿を取った紫小紋の侍
どんな伝承か
こもんさんという評判の美人が年頃だった頃、明治維新の少し前の話。去暗という山の開墾地へ昼飯を背負って行くと、山へ入る道に、紫小紋の長い袖の着物に袴、刀を落とし差しにした色白の男が立っていた。男嫌いのこもんさんも一目で心を引かれた。男が遊んでいけと言うので、届け物をしてすぐ戻ると答えると、証拠を置いていけと言われ、籠から皿を一枚取られた。急いで往復して戻ると男の姿はなく、転び石の上で誰かが大いびきをかいている。忍び寄ると太い蛇がとぐろを巻き、鎌首の上にあの皿を載せていた。魔物に証拠を取られると毎晩通われて命を取られると聞いていたので、モミの枝で皿を弾き飛ばし、振り返らずに逃げ帰ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。