梨の木の心中と首を吊った雌狐
どんな伝承か
住吉の森の県道ばたに、甘い梨をたわわに実らせる木があった。御所平の一人息子長作と原の小作人の娘お花は想い合っていたが、家に許されず、この木の下でひそかに会っていた。それを陰から見ていた山の雌狐が長作に恋をした。久しく会えずにいたある日、田を見回る長作のもとにお花が現れ、約束どおり死のうと急かした。二人は一本の縄で木に首を吊ったが、軽いお花が吊り上がって死に、長作は助かって村を去った。その後、木の下で雌狐が首を吊って死んでいた。何年か後にこれを聞いた長作が戻って求婚すると、お花は悲しげに黙って姿を消した。以来その梨は渋く、割ると中が血のように赤いという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県史 民俗編 第1巻 3 (東信地方 ことばと伝承)(長野県史)
『長野県史 民俗編 第1巻(三)東信地方 ことばと伝承』は、長野県史の民俗編のうち東信地方の伝説と世間話を抜き出したものである。植物・石・水・塚・坂と峠・山・城と屋敷・田と原・地蔵や観音・社寺・地名・禁忌などの伝えを、条ごとに採集地を添えて収める。双子池や白駒の池の主、望月の駒、甲賀三郎、ごまを作らない村々の禁忌、京の岩・宮下・菱野村の七不思議など、佐久・小県の土地の伝えが並ぶ。