一夜で福島へ飛んだ日光の天狗
どんな伝承か
盛岡の八角良温が著した『塵袋抄』に、こんな話が載る。下総の俳諧師行芝は講中の総代として、下野の日光山瘤ヶ原にある神木伊織の家を訪ねた。伊織は日光山の天狗を束ねる家とされ、火難除けの札で名高い。夕立が来ると大柄な山伏が現れ、行芝の入った据風呂を膳でも運ぶように軒下へ移した。そこへ奥州福島の合羽屋が来て、頼まれた合羽を家に忘れたと詫びると、伊織は大男を雨の夜の福島へ取りにやった。夜更けに戻った男は、空き家に火をつけた明かりで探し出し、火は宇曽利山の坊の力を借りて消したと言う。合羽屋が急いで戻ると、本当に空き家が一軒焼けただけだった。大男は皆天狗だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。