亡者を石段まで送ったオトウ
どんな伝承か
昔、田名部の町に福島金次郎という人がいた。恐山と縁が深く、山の寺ではオトウと呼ばれていた。寺の囲炉裏で参詣者と夜更けまで昔話に興じていると、オトウはふと立ち上がり、庭先から下駄をつっかけて地蔵堂の方へ出ていくことがよくあった。気味悪がった人々が戻ったオトウに訳を聞くと、亡者が来たが行き先がわからず迷っていたので石段まで送ってきた、あの人もとうとう冥土へ来たか、と答えるのが常だった。オトウには山門から本堂へ向かう死者の姿が見えたのだという。白い犬や狐の霊も来るが、獣の霊は本堂を一回りすると三途の川を渡って帰っていく、とも語っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。