天ぷら鍋をなめた男と狐の仕返し
どんな伝承か
ある年の三月、雪が固く締まるころのこと。浜奥内の子どもたちが朝、学校へ行く途中で遊んでいる狐を見つけて追いかけると、狐は何度も振り返りながら今泉の方へ逃げていった。その晩、集落のある男が奥内で酒を振る舞われ、夜道を帰る途中、狐に惑わされて正気を失った。よその家に窓から入りこみ、台所の天ぷら鍋に首を突っこんで、手を使わずに舐め回していた。その姿は狐そっくりだった。家の人が大声を上げると男は飛び出し、朝の狐と同じく今泉川の方へ逃げた。川岸で、浜奥内にこんな川があったかと思った途端に正気に戻ったという。子どもに追われた狐が、大人に仕返しをしたのだろうと言われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。