怒鳴って退けた狐の灯
どんな伝承か
田名部の品の木や最花と東通村田屋の間は狐の多い所だった。村役場が田名部にあったので東通の人々はよく町へ出て、帰りに化かされたものだという。昔、田名部の一と六の日の市には、近在の女たちが早朝から野菜を売りに来た。ある年、上田屋の婆さまたちが畑の野菜を馬車に積み、市に出そうと午前二時ごろ集落を出た。最花の近くまで来ると、遠くに灯がぽつんぽつんと見え、遠ざかったり近づいたりする。一行の中の新次郎家の婆がはっと気づき、だまされるものかと怒鳴りつけ、先頭に立って明かりと反対の方へ皆を歩かせた。まもなく明かりは消え、一行はいつもの道を歩いていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。