女房に化けたトノンカの狐
どんな伝承か
今から五十七年前のこと、加保の染屋の二番蔵の前で、戸前石の上に福おんつあがくの字になって眠っていた。下の段には地下足袋がそろえられ、枕もとには提灯が置かれていた。見つけた染屋の旦那が家へ連れ帰ると、福おんつあは前夜のことを語った。小平の耕林寺の前を過ぎてトノンカの屏風石まで来たところ、遅いから迎えに来たと女房が言うので、二人で家に帰り納戸で寝たのだという。トノンカの狐に化かされたのだが、友達の蔵まで連れてきて寝かせたのだから狐は利口だ、と福おんつあは言っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
平田村史 第3巻 (民俗編)(平田村史)
『平田村史 第3巻(民俗編)』の昔話と伝説の章から、伝説と世間話の節を抜き出したものである。福島県石川郡平田村の大字・字ごとに、八幡太郎義家や日本武尊にまつわる地名の由来、河童石、姥捨ての十石山、平堂内の大蛇、鶴殺し南兵衛、狐に化かされた村人の話などを収める。阿武隈の山あいの村に残る、石と塚と小さな祠にまつわる伝えが中心である。