琵琶滝の写真に浮かぶ身体のない顔
どんな伝承か
大阪の河原文子さんが勤める職場のハイキングクラブが三重県名張市の赤目四十八滝を訪れ、琵琶滝を背に撮った一枚のカラー写真に、誰も知らない男の顔が写り込んでいた。顔は仲間の福田さんの腕にあごを載せたような位置にあるが、身体も足もなく、その下には滝の泡と水しかない。現像所も大阪府警の鑑識も細工や二重写しは考えられないとした。著者が現地へ行くと、写真の場所には飛石が二つあるだけで、人が後ろに立てる足場はなかった。赤目渓谷保勝会の所長によれば、滝ではこれまで約百人が亡くなっており、昭和三十一年二月ごろ身元不明のまま火葬された若い男の自殺者に顔がよく似ているという。滝つぼは深くて遺体が上がりにくく、昔から数えれば四百ほどの無縁仏が眠っているともいう。同じ写真には流れ落ちる水に重なって、もう一つぼんやりした霊らしい姿も見えたが、不鮮明で霊体とは言い切れなかった。河原さんは数年前にも日光の華厳の滝で水死者らしい霊体を写しており、著者は彼女の強い霊波が霊を呼んだとみている。
原典より
注意深く見ると、この顔には身体も足もない。—— 霊魂の謎-新版タナトロギー入門(中岡俊哉・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の謎-新版タナトロギー入門(中岡俊哉・1990年(平成2年))
『霊魂の謎-新版タナトロギー入門』は、昭和四十八年に新書版で出た『タナトロギー入門』を、中岡俊哉が文庫化にあたって大幅に加筆・訂正した心霊研究の本で、まえがきは一九九〇年九月付である。著者自身の霊体験から説き起こし、背後霊・地縛霊・騒霊・悪霊・祖先霊・金縛り・淫霊の事例、臨死体験と転生、死者の声の録音や自動書記、恐山のイタコ、心霊治療、心霊写真の鑑定を国内外の例で述べる。まえがきでは「七疑三信」という著者の調査の立場を語っている。