次男の遭難を告げたのぞき込む気配
どんな伝承か
父が死んだのは明け方だった。父は郷里の新潟、私は東京と離れていたので死亡時刻は後で知ったが、その時刻に何か恐ろしいものに襲われた気がして目を覚まし、起き上がろうとしたとき仏壇の中で鋭い音がした。やがて電報が届いて父の死を知る。次に社用で京都に泊まった晩、明け方三時ごろ、言い知れぬ寂しさに包まれ誰かがのぞき込んでいる気がして飛び起きた。電灯をつけても何もない。朝六時ごろ部屋の電話が鳴り、修学旅行に出た二男が遭難したという知らせだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。