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病室に立って泣いていた神戸の母

所在地東京都千代田区お茶の水
年代昭和三二年
登場楠本憲吉、体験者(本人の手記)
出典日本怪談集 幽霊篇

どんな伝承か

昭和三十二年の二月、長期の療養を告げられた筆者はお茶の水の病院に入った。個室へ移った日の安静時間、窓は厚いカーテンで閉ざされ、読書もラジオも許されぬ薄暗い部屋で、いつのまにかうとうとしていた。その最中、ベッドの右脇に、神戸にいるはずの母がしょんぼりと立ち、右手で額を押さえてしくしく泣いている。心配しなくてよいと声をかけた自分の声で目が覚め、そこを見ると母の着物で仕立てた丹前が下がっているだけだった。夢かと思い直して再び眠ったが、安静時間が明けるなり妻が駆け込み、母が脳溢血で倒れたと泣き伏した。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))

『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。

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