後妻の髪をむしりとる先妻の霊
どんな伝承か
『因果物語』が伝える江戸の麹町の話。ある家の妻が重い病で死ぬ間際、夫に向かい、もし自分の死んだあとで家の下女を後添えにするようなことがあれば必ず祟ると言い置いた。ところが夫はその言葉をほどなく忘れ、下女を妻の座に据えてしまう。すると死んだ妻の霊が現れて、下女の髪をつかんで引き抜こうとする。痛みと恐ろしさに下女が泣き叫び、人が駆けつけて見ると何の異変もない。だが人が去るとまた手が伸び、少しずつ髪をむしっていく。それが幾度も重なって下女の頭からは髪が一本も残らず、ついに命を落としたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。