草を刈った海軍墓地に浮かぶ人影
どんな伝承か
本土を目の前にしながら敵機の機銃掃射に倒れた幾十もの海軍将兵の亡骸を、島の人々が南の土手に手厚く葬った「海軍墓地」があった。訪れる人もなくなった墓地を気の毒に思ったある島民が、子どもを連れて草を刈りに行き、一通り掃除を終えて帰ろうとしたとき、子どもが「父ちゃん、あれは何だろう」と不思議そうに指さした。見るとそこに、旧海軍の服を着て帽子をかぶった人影が朦朧と浮かび、じっとこちらを見ていた。父親は背筋が凍りついたが、何でもないと子どもの手を引いて墓地を離れた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。