狂い死にした妾の幽霊
どんな伝承か
三〇年ほど前、江戸川べりの借家に住んでいた頃のことだ。元は小旗本の持ち家で、奥に土蔵がつき、庭は始終じめじめしていた。当時八十余歳の老父がある朝、『ゆうべ出た。真夜中に障子がぱっと明るくなり、十八、九の娘の顔が映ってにやっと笑ったので、迷っているなと思い御真言を唱えて拝んだら消えた』と語った。近所の年寄りや大家に聞くと、先々代が本妻と妾を同居させ、妾は狂い死にしたという。老父が見たのはその妾の幽霊だろうと私は判断している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・昭和(怪談集成))
日本各地の幽霊・人魂・生霊の実話怪談を十章+幽霊外伝に分類して集成する。