障子にうつる死の前兆の影
どんな伝承か
死ぬ人は影が薄いという俗信は各地にある。喜界島では、人が死ぬ前にはまずマブイ(魂)が抜け去ると信じられ、あの人は後ろ影が薄くなったからもう長くはあるまい、などと言われたという。岩手県遠野地方では、小正月の晩に影法師のない人はその年のうちに死ぬと信じられ、死ぬ人は二、三年前から何となく影が薄く、よく物につまずくようになるという。その隣の青森県野辺地あたりでも、死の前兆として障子に影がうつることがあると語る人がいる。『小右記』や『今昔物語』にも灯火の炎の上に人影が見えた記事があり、平安朝から影の俗信があったことが分かる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。