寺普請の昼休みに現れた小松
どんな伝承か
遠野地方では、生者や死者の思いが凝って出て歩く姿が幻となって見えるのをオマクという。佐々木喜善の幼いころ、土淵村の光岸寺が火災に遭い、字山口の慶次郎という大工が頭梁となって新築工事を進めていた。ある日、四、五十人の大工たちが昼休みをしていると、そこへ十六、七の美しい娘が潜り戸を開けて入ってきた。その姿は居合わせた皆の目にはっきり見えた。慶次郎は、今のは俺の隣の家の小松だが、傷寒で苦しんでいてここへ来るはずはない、それではとうとう死ぬのかと言った。果たしてこの娘は翌日死んだという。その場で娘を見た一人、古屋敷徳平の話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。