親類が来ぬ披露宴に立てた仮親
どんな伝承か
出雲市で聞き取りに応じたV氏は、姪の縁談について語った。仮に幸子と呼ばれるその姪は、〈クロ〉すなわち筋とされる家の青年と三、四年越しに想い合い、ようやく所帯を持つことになる。V氏の側の親類はこぞって反対したが、彼はなんとかまとめてやろうと考え、自ら媒酌人を引き受けた。ところが式の当日、〈シロ〉である身内は誰ひとり姿を見せなかった。そこで親代わりを別に立て、市の体育館を借りて披露宴を開いたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。