隧道の囁き声と馬の血汐
どんな伝承か
遠距離霊写実験の第三の地点は、湯本村小野田炭山の軽便軌道の隧道内であった。乾板を持って隧道に入った二人は、その時刻になると頭上に二三名の囁き声が聞こえ、同時に一陣の不可思議な風が起こったが、その後は何の変化もなかったと異口同音に語った。現像された乾板には、囁き声を起こしたものらしい顔と、全面に赤紅色を帯びた不規則な肉状のものが飛び散った様子が現れた。中心と見られる部分には栗毛の馬の前足があり、血汐の附着した肉塊を写し出している。調べると、かつてこの隧道内で軌道馬車が衝突し、両車体の間に挟まれた馬一頭が轢死していたことが分かった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心靈寫眞の研究(大和田徳義・大正時代(1920年代))
本書は大和田徳義による心霊写真(靈寫)の研究著作であり、大正時代の日本における心霊現象の科学的実証を主題としている。世界的心霊写真家・日光氏の実験結果を中心に、乾板膜面への直接的な心霊的変化を捉える無機霊写と用機霊写の両現象を詳細に記録。福島県の炭鉱事故や白江村の怪異現象など実際の事件との関連性を追究しながら、個人の病因や死者との因果関係を示唆する事例を多数収録している。同時に過去の詐欺事件や科学的検証の必要性についても言及。