馬と天に昇った娘とオシラサマ
どんな伝承か
岩手県遠野の民話として名高いのがオシラサマの伝説である。昔、ある村に父と母と美しい娘がおり、家には若く立派な牡馬がいた。娘は幼いころからこの馬を好み、年頃になっても離れず、ついに馬と結婚すると言い出した。怒った父は娘の留守に馬を桑の木に吊るして殺し、皮を剥いだ。帰った娘が泣いて詫びると、馬の皮が飛んできて娘を抱え、ともに天へ昇ってしまった。両親は桑の木の前で泣き暮らしたが、夢枕に立った娘の言葉どおり三月十四日の朝に臼の中を見ると、馬のような顔の虫がいた。桑の葉で育てると白い繭を作り、織物で家は栄えた。これを祀ったのがオシラサマだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
震災後の不思議な話-三陸の怪談(宇田川敬介)
『震災後の不思議な話-三陸の怪談』は、宇田川敬介が著した東日本大震災の被災地の怪異談集である。復興の手伝いで通った三陸の人々から聞いた虫の知らせや生死を分けた出来事、津波の犠牲者の霊、タクシーの幽霊などの話を、津波の言い伝えや『遠野物語』、オシラサマ伝説とあわせて記す。全体を「迫りくる危機と虫の知らせ」から「見守っています」までの四幕に分け、「おわりに」で取材の動機と、話者の名や地域を伏せた方針を述べる。